時々、学生だった時のことを思い出す。講義を聴きたいという純粋な好奇心に比べると、単位などという俗世の要素はケガラワシイもののように思えていたので、ただ聴きたくて出かけた講義ではわざと試験を受けなかったりしたこともあった。単位がそろってからのことだけど(当時はユルイ学部だったので単位はすぐにそろったのだ)。
他学部に週1コマ数ヶ月だけ聴きに行っていた講義は、出席者がいつも3人だった。DNAの損傷と修復の話だった。ひんやりがらんとした大講義室でぽつんぽつんと座っていたのを思い出す。最後の回で先生から名前と所属を訊かれた。「出席してくれた人にはメリットがあってしかるべきなので、試験を受ければ単位はあげます。」という理由だった。なんだか寂しいなと思ったので、名前は言ったけど、試験は受けに行かなかった。今でもふと、「話が聞きたかっただけで、単位は要りません」と言うべきだったのかもしれないなと思うことがある。試験を受けるべきだったかなと思うこともある。
学生の時には、講義をする先生たちとコミュニケーションがうまく取れなかった。教室全体がそういう風だった。今だったらもっと面白い会話ができるだろうに、やっぱりコドモだったんだろうか。