夜、車で家の前に戻って来ると、エンが門柱の上でスフィンクス座りをしているのが見える。エンは私の車が見えるとパッと立ち上がって、必ずウーンと前脚の伸びをしてから、反転して門柱から下り、階段を下って迎えに来る。
エンが車を見て立ち上がる瞬間は、いつも軽い感動を覚える。切ないような、苦しいような、愛おしいような、なんとも言いようのない気持。
たぶん、帰りを待つだけのために門柱のところにいるわけではないと思う。家の中は退屈だから、外に出て通りかかる車とか人を眺めている。おまけに女子高生に撫でてもらったりもする。そうこうしているうちに私が帰って来るので迎えに出る、というくらいの感じなのかなと。車内の人の顔が見えているとは思えないので、車の形かエンジン音で覚えているのかも。