文化財や標本の「レスキュー」という言葉は、人命救助のアナロジーなわけで、同じアナロジーを使って、「トリアージ」と呼べそうな作業も行っている。
急いで処置しないと最悪状態に陥りそうな標本と、少し放っておいても大丈夫そうな標本を仕分けする。さらに言えば、もう救いようがない標本もあって、優先順位からいけば、それらもしばらく放っておくしかない。あと、採集データがない標本とかも、後回しにされてしまう。
トリアージの判断を誤ると、状態が急速に悪化して大変なことになる。今回、明らかに判断ミスだったのは、レベル2の標本はしばらく放っておいて、レベル3を先に処置すべきと思い込んでしまったこと。台紙の端が海水で濡れているレベル2の方が、全体が海水に浸かっているレベル3よりも、明らかにカビの増殖が速かった。これは判断ミスだ。幸い、レベル2と仕分けされた標本は多くなかったので、あまり被害拡大せずに済んだ。