ガンバ奏者・櫻井茂先生から弦楽四重奏の「非公開」レッスンを受けた。最初の話では「公開」とのことだったが最終的に「非公開」になり、そのおかげで遥かに学ぶことの多いレッスンを受けることができた。なにせ2時間半も見て下さって、しかも色々なことをぎっしりと詰めこまれた。
曲はこちらが選んだ「フーガの技法」。正直なぜわざわざこんな難しい曲をという感じで、合奏練習を重ねるうちにどうしたら良いのか分からなくなっていくのは、基本の教養がないからだろうと思ってたんだけど、まあそんな風に混乱して糸が絡まった状態のところを、先生はまず上手にバラバラにほぐして下さった感じ。
その後は、ほぐした4本の糸でどうやって「織物」を織っていくか、そのための指針を、様々な角度からレクチャーして下さった。調性、フレーズの捉え方、音のつなげ方、強調、力の入れ方と抜き方、テンポ、ビブラート、ボウイング。ポイントがあまりに多すぎて、自分では消化しきれていないけど、一つ言えるのは、バロック音楽を作るのに必要な教養は、「規則」とか「約束」というようなものではないということだろう。様々な角度から試して、全体的に上手く行けばそれで良い、というか。つづめて言えば、バロックだから特殊な弾き方をしなければいけない、などと考え過ぎる必要は全く無い、ということになる。我々のよく知っている古典派の音楽で「自然に」やっていることを、同じようにやることがまず基本。
シンプルな四分音符の列も、先生が弾くと魔法のようにフレーズがつながって聞こえた。「良い見本」と「悪い見本」のどこがどう違って聞こえ方に影響しているのか分析しきれないので真似できないが、大雑把に言えば、各音の相対的な強さと長さ、音から音への運び方のコントロールを、全体の構造を把握した上で行うこと。それが素人には一番難しいんだけど。
そういう数々の指摘を、我々みたいなドシロウトに、きわめて穏やかにかつ面白そうに語って下さって、本当にありがたいレッスンだった。