フランクのソナタをまた少しずつ弾いているわけだけど、昔は気にならなかったことが気になりだした。"con fantasia"という発想記号の書いてある部分は、どういうイメージで弾くのが良いのだろうか。特に3楽章は楽章そのものに「Fantasia」と付けられているし、繰り返し"largamente con fantasia"と書いてある。
「Fantasia」は「幻想曲」などと訳され、con fantasiaも「幻想的に」などと訳されるのだけれど、では「幻想的」とは一体どういうことか。それが分からない。
日本語における「幻想的」という言葉のイメージは、たとえば霧の中の湖、あるいは夢の中のできごと、神秘的な感じといった、どちらかと言えば静かなもののように思われる。「幻想的な風景」というと、宙に浮かんだ島のような、非現実的で美しい風景を思い浮かべる。
しかし例えばウィーン幻想派、あるいはその前のクリムトの絵を「幻想的」と言うとすれば、確かに夢の中のようでありながら、もっとカラフルで派手なイメージだ。
そのものずばりの質問を英語でしている人がネット上にいた。
http://wiki.answers.com/Q/What_does_con_fantasia_mean
この「con fantasiaとはどういう意味か?」という問いに対して、回答者は驚くべきことに、
"I live in Italy and have heard this a lot in fabric stores. I believe it means something along the lines of whimsical, with swirls, or fancy."
イタリアでは服地屋でよく聞く言葉で、風変わりな、ヒラヒラした派手なものを"con fantasia"と呼ぶのだと思う、などと答えている。
というわけで、おそらく日本語でいう「幻想的」とは相当に違ったイメージが"con fantasia"にはあるのだと思われる。少なくとも、神秘的で静かな感じからは遠そうだ。カラフルで派手、魔術的で空想的、という感じで行ってみようかと思う。