やっと落ち着いて、Biesmeijer et al.(2006, Science 313:351-)の感想。
まず、これと同じことを日本でやろうとした場合についての検討。方法を読んでみると、意外とラフなデータをラフに扱っているので、これなら日本でもできるかも、と一瞬思った。でも、やっぱりダメかな。
Biesmeijer(長いので以下Bと略す)達は、ハナバチの中で特殊なBombusApisを分析から外している。一方、日本ではこの2つのグループ以外のデータが絶望的なまでに弱い。特にコハナバチ科とヒメハナバチ科がまともに種まで同定してあるデータが少なすぎる。ハナアブも難しい。せめて標本が作ってあれば今からでもデータにできるんだけど、標本も少ないよね。植物も、種ごとに増減を押さえられるデータはないだろうなあ。減少が著しい種についてはレッドデータが使えるけど、増加している種についてはほとんどまったくソースがない。一体どういうデータソースなのか、どうやったらそんなデータが取れるのか、知りたいな〜。こういう時、やはり日本のナチュラルヒストリーの弱さは埋めがたいと思ってしまう。
Bらが示したことは、ハナバチの中でもスペシャリストのグループの種多様性が減っていて、スペシャリスト媒の植物もやはり多様性が減っているということ。どちらが原因とも分からないし、まったく別の原因があるかもしれない。と彼ら自身が書いている。
そこで思いつく「別の原因」として、私がだいぶ前からひとつ検討してみたいと思っているのは、ポリネータシンドロームと景観の間の相関の有無。スペシャリストのハナバチは特定の植物と強く結びついているけれども、その相互作用するセットは特定の景観と結びついてはいないのか。もしそこに相関が見つかれば、特定の景観の破壊が著しいと仮定すれば、送粉者と植物の組が同時に減少していても不思議はなくなる。イギリスとオランダで結果が少し違うのは、その辺りに理由があるからではないか。
彼らの使ったデータにはハビタットの項目もあるので、その検討は可能なはず。ちなみにハナバチとハナアブの2者で結果が違うことを考えると、景観を乾湿傾度で考えるのが最初のステップ。
あとすごい不思議なのが、Table2の結果なんですけど・・・。特にイギリス。なぜ風媒(または水媒)の他殖性植物は増えていて、自殖性の植物は増減していないの?そのメカニズムが推測できない。もし日本でこの調査をしたら、絶対に自殖性の植物の増加がはっきりと現れるだろうと私は予想するのですけど。