去年、実家で通読したものの、真一君がどうやって飛行機に乗れるようになったのかまったく思い出せなくなっていたので、気になってその周辺(8〜10巻)だけ購入して再読。・・・ああそんな話でしたっけね。
それはともかく、みんなが気づいていることを改めて書いてみたくなった。主要人物の中でただ一人、独白のない人物について。少女マンガ文法において独白(=吹き出しに入らない心の声)は、内面を描くためのほとんど唯一の手段であって、独白が出てくるまでは読者には「その人物が本当は何を考え感じているか」が分からない、ということになっている。独白が表れるまでは、読者はその人物に同化し共感する権利を与えられない。そういう約束になっているのだ。それなのに、作者はその中心人物の独白を不自然なまでに徹底的に避け続けている。これは、一体何を意味するのか。
読者はその人物に共感することを作者によって禁じられている。つまり独白の回避は、読者がその人物を永久に「不思議な生き物」として捉え続けることを可能にする、意図的な技巧なのだと考えるべきだろう。それは第一には、読者に絶えずコミカルな驚きを感じさせるためのギャグ漫画の手法なのだが、しかし通常あるべき場面ですら内心の声が表現されないために、読者はいつしかその人物には「描かれるだけの内面がない」のだと感じるようになる。実はそれが、彼女がまだ「べーべちゃん」であることを表現するほとんど唯一の手段なのではあるまいかと思うのである。
あー、こんな無駄な文章を書いている暇があったら、図録の原稿を書けばいいのに。