イーガン「TAP」(山岸真 編訳、河出書房新社 奇想コレクション)読み途中です。頭から読んでいって、んん〜なるほどね〜でもイマイチなんか物足りない、とか思っていたところへ、
「銀炎」。これはすごい。ガツンと来た。このテーマをこんなにストレートに書いていいのですか。

わたしたちの世代は、重要なことはすべて、自分たちの子どもに伝えているつもりでいた。科学、歴史、文学、芸術。子どもたちの手がすぐ届くところには、膨大な情報の宝庫がある。しかしわたしたちは、すべての真実の中でももっとも苦労して手に入れた真実を伝えるための努力を、じゅうぶんにはしてこなかった。『道徳はわたしたちの内側にのみ由来する。意味はわたしたちの内側にのみ由来する。わたしたちの頭骨の外にある宇宙は、人間になど無関心だ。』

これは、スピリチュアリティを罵り、攻撃し、貶める小説ではなく、その甘美な毒と対峙させられた人が、己の無力さを噛み締め、歯軋りする小説ですね。そうだ、人はスピリチュアリティに対しては、絶望的なお手上げ状態なんだ。こうなってしまったら、ほとんど何もできないんだよ。
しかし記述は公平で、逆の視点からの読み方も可能だ。何が正しいかなんて、何が真実かなんて、分かりっこない。意味はわたしたちの内側にしかないんだから。