ある方が、県の内陸部で去年の5月上旬に採集した植物標本を持参された。その標本の日付を見たとたんに、自分の中に怒りというか妬みというか、真っ黒な感情がむくむくと湧き起こったので驚いた。あの大変な時期に、この人は呑気に自分の好きなことをして遊んでいたんだな、というような。さすがにそれを口に出さないだけの理性はあったけど、しばらく無口になってしまった。客観的に見ればそんなのは理不尽だ。その人がその時期に他に何をしていたのか、私は全く知らないのだから。もしかしたら沿岸へ通う行き帰りに、ちょっと寄り道をして採集した標本だったのかもしれないのだ。
でも、なんていうか、そういう感情もあるってことを身をもって知ったよ。