午後、岩渕先生の火葬に行って来た。オープンしたばかりの真新しい斎場に、100人くらいの人が来ていた。
お葬式は無宗教で、との指示があったと伺った。人がぎっしり並んだ斎場で、御親族からの御挨拶があった後、お焼香をして退出。
棺の上に、写真が立てかけられていた。岩手山の登山口に立って片手を挙げる先生。その隣に木の札があった。先生の自筆なのだろう、毛筆で「自分の救済者は自分自身である ―ブッダ」と書いてあった。
弔いの場でこういうものを見るのは初めてで驚いたけれど、すぐに先生らしいなあと思った。己の信条に忠実な、真面目な人となりがよく表れているし、型どおりの仏式葬儀をしたくない理由がこれで十分に説明されている。少しばかり皮肉も混じっている。「仏」にすがって救済を願う仏教の祖が、こういうことを言っているんですよと、参列者に問いかけているようだ。
いつも言葉少なだけれど、己を曲げずに本質を追及する先生の人格が、強く表れていると思った。チヤホヤされることを好まず、他人に媚びず、自分が求めるものだけをコツコツと積み上げておられた。