古い標本は古い新聞に挟まっている。標本を整理していると、ひんぱんに面白い記事に出会う。目を奪われて作業が進まないこともよくある。
今日の作業を止めたのは、昭和41年7月10日の朝日新聞岩手版の「養殖アブでリンゴの受粉」の記事。リンゴの授粉に昆虫を利用しようとしたけれど、県立園芸試験場ではマメコバチの増殖が上手くいかなかったので代替にシマハナアブの人工飼養を研究開発、自然状態の4倍の授粉効率を実現、という内容。とても詳しい記事で面白かった。計画では10アール当たり5千匹の放虫が適当とか、来年のために10〜20万匹の蛹をストック、とか。この密度でシマハナアブが飛び交うところを想像すると、かなりすごい光景ではないだろうか。これは実現したのか、この開発研究はこの後どうなったのか、気になる。論文になっていないか探してみたい。
現在では人工的に放したハナアブによる農作物の授粉はほとんど行われていない。リンゴではたぶん、マメコバチの人工飼育が上手くいくようになって、ハナアブは効率の点で勝負にならなかったのではないだろうか。