「象られた力」(飛浩隆・ハヤカワJA文庫)読了。ふむふむ。ほうほう。へええ。おおっ。みたいな感じ。
出発点がそもそもファンタジーなので、認識改変力はさほどなく、つまり正直なところ私的な意味ではSF感覚はうすかったです。でもそれ以外のところで十二分に楽しめました。イメージの鮮やかさとか、文章のレベルの高さとか、ぐいぐいと引っ張る感じとか。
「出発点がそもそもファンタジー」だというのはどういうことかと言うと、例えば表題作。象徴というのは学習によって初めて意味と効力を持つのだという人間にとっての大前提を、あえて無効にしてストーリーを作っている。そのへんが「あなたの人生の物語」とは違うところだ。たぶんこの方の強みは論理よりも感性なのでしょう。ゴーグルを見て「かたち」と「ちから」の関係に思い至る場面はとても面白い。
1箇所、入るべき人名が間違っているような気がしたけど。わざとだとすると唐突すぎるので、ミスかな。322ページの最後の行。