イーガン「ひとりっ子」(山岸真訳・ハヤカワSF文庫)読んじゃったー。
自分は、物理・数学・コンピュータに関する教養が絶対的に足りないので、面白さが半分しか分からなくて、もったいない。ルイスに関する知識は十分で元ネタは全部分かる(『滅びの惑星』のくだりはとっても笑えた)のに、チューリングに関する知識がまったく無くて誰がモデルなのかすら分からなかったのがその良い証拠。
解説を読みつつ改めて理解できたように思ったこと。イーガンが主要な著作テーマのひとつとしているのは、人間から人間性をはぎとることで、逆に人間を人間たらしめているものは何かをあらわにし、さらにそれを通じて人間性を再獲得しようという試みなのだ。テクノロジーとガジェットは思考実験の手段。ただ人間を「もの」として描いてみせ驚かすだけが彼の小説の魅力なのではない。有機的機械としての人間といったイメージならばすでに現代人の大半に共有されているだろう。著者はさらにその先で、人間性の再獲得を模索しているのだ。ひどく保守的だと言えなくもない読後感はそこから来ている。そんな風に私はイーガンを読む。そして、彼の信じる「人間性」がまっとうで揺るぎないところに惹かれる。そう、グレッグ・イーガンヒューマニストなのだ。