「究極のSF 13の解答」(創元SF文庫)を読み途中。"Her Smoke Rose Up Forever"(ティプトリーJr.)をこのアンソロジーで再読して、初めてこの小説の意味が分かった。小尾訳『けむりは永遠に』と友枝訳『煙は永遠にたちのぼって』(サンリオSF文庫「老いたる霊長類の星への賛歌」所収)の違い、というわけではなくて、単に自分の読み取り能力の低さから来るのだけれど、サンリオ文庫で読んだ時にはこれが「ホロコーストの後」「最後の審判日」について書かれた小説だとはまったく気づかなかった。元のアンソロジーの形で明示されて、初めて分かったという。ティプトリーにはこういう難しいのがいくつかあるなあ。タイトルも難しい。"Her Smoke"のHerって誰を指しているのか、やっぱり地球なのか。
「SFの殿堂 遥かなる地平1」(ロバート・シルヴァバーク編、ハヤカワSF文庫)も読み途中。全部初読。ル・グィン『古い音楽と女奴隷たち』はかなり『闇の左手』に似ている。外宇宙から派遣された使節は、その惑星の政治に外からの視点を持ち込み、大きな変化をもたらすという点で特別な存在なのだけれど、使節自身には何の権限もない。そういう使節的存在(=よそもの)の在り様だとか、観察者であったはずの使節が状況に巻き込まれ体験者へと"転落"する様子だとかは、たぶん何か非常に重要なこと(例えば社会と個人、権力と差別の関係とか)の象徴なのだ、という感じに読める。この「使節的存在」の視点はいかにもハイン世界独特のもので、面白い。ル・グィンの他の小説と同じく、真面目すぎて辛いけど。