連休中に「航路」(コニー・ウィリス著、大森望訳、ソニー・マガジンズ)読了。おもしろーい。特に新しい世界が見えるわけではないけど、どんどん読んでしまう。登場人物がステロタイプだからか、面白いハリウッド映画を見ているような気分がずっと続く。本当に映画だったら、終盤の衝撃に観客が耐えられない可能性が高いけど。小説としては、船が沈むときの描写がすごい。
「最後のウィネベーゴ」を読んだ時も思ったことだが、この人の小説はテーマが二重構造になっているみたい。「航路」の表のテーマは臨死体験だけれど、裏のテーマは否認についてだ。人は親しい人の死を否認する。そこにいるべき人の不在を否認する。己の無力さと愚かさを。メッセージの意味を。この小説は、受け入れられないことを受け入れる苦しさについて、それを回避しようとして否認に陥る人間の哀しさについて、パターンを変えては繰り返し描写している。そのことに心を打たれる。