スフィンクス」(萩尾望都)。
「テーマはこれこれで、それをこんな風に描いていて、その技がどうこう」みたいな表層的な分析ができない。なんだかもう、すごいところにいる。言葉では表現しにくい世界があって、しみじみと繰り返し味わって楽しむ。

萩尾望都の物語にわりとよく出てくる型がある。みんなが言いにくいなと思っていることを、空気を読まずにズケズケと言う女性が登場する。みんなその人のことを、困ったなあという目で見ている。はっきり疎ましがられていることもある。普通、派手なファッションのおバカキャラとして描かれている。
ドラマのクライマックスでは、闖入してきたその女がズバリと真実を口にすることで、停滞していた物語がガラガラと崩壊する。あるいは、もつれた糸がスッキリとまとまる。たいていの場合、主人公は思ったことを口にできないグズグズした性格で、典型的な巻き込まれ型だ。だから、この女性は主人公とは対照的な位置にあるわけだ。
物語における機能はそういうことなんだけれども、さらに大事なのは、多くの場合この女が「母」である、ということなのではないかと思う。

というような分析をしてみたところで、受けた衝撃を伝えることにはならないわけだけど。いやーすごいね。