庭園美術館の「森と芸術」展を見てきた。いろいろな時代のいろいろな物が見られてとても楽しかった。ほとんどは国内の美術館の所蔵品だけど、見たかったものは見られた感じ。
構成はあまり面白く感じなかった。ヨーロッパ美術における「森」の意味を時系列で追うという、とても真面目な作りになっているんだけど、美術史に興味を惹きつけるにしては肝心の説明が簡潔すぎて意味が分かりにくいし、作品を見る楽しさとうまく結びついていなかった。たとえば、楽園からの追放のテーマは構成から言ったら大切なところなんだろうけど、その大切さが上手く伝わらないし、展示品は見てもさして面白くない。もっとサクッと流しても良かったのではないだろうか、などと考えてしまった。
でも展示品の見せ方には色々な仕掛けがしてあって、それがとても楽しかった。照明もうまい。「森」のキーワードひとつで、この方向性をとことん突き詰めれば、ものすごくセンセーショナルな展示になったじゃないかと勝手に想像してしまった。つまり、全体がちょっと中途半端な感じと言えば良いか。
建物自体がアールデコで、内装が凝っている。その内装と展示作品のイメージとがうまく融合している部屋では、最高に気持が良くて、そこに立っているとうっとりする。一方、部屋の雰囲気をうまく生かせていないコーナーでは、展示品もパッとしないものに見えてしまう。さらに、多くの部屋で展示用の内壁を取り付けてあり、内装が隠れてしまっている。壁に穴を空けられないから内壁を立てるしかないんだろうけど、もったいない。もっと自然な感じで、全作品が各部屋の装飾の一部のように展示してあったら、ものすごく素敵なのになあ。書庫や書斎なんてヨーロッパ映画か童話のようで、本当にうっとりするよ。西野作品も、あんな玄関入ってすぐのところじゃなくて、書庫に作れば良かったのに。つまり、普通の美術展示をするには建物に雰囲気がありすぎるんだなあ。難しい。
アーサー・ラッカムなどの絵本の挿絵を久しぶりに見て、とても懐かしかった。そうだ、こういうのを見て育ったんだよ。ものすごく久しぶりに、子どもだった頃の気持を思い出した。