真にオリジナルで新しい研究をして,学術雑誌に掲載される原著論文を書く作業を「狭義の研究」だとすれば,日本の博物館の研究機能は,不要論と必要論の間でずっと揺れている,と思う.その両極の間のどこに位置するかは,館によって千差万別だ.本当に説得力のある必要論を読んでみたいのだが,なかなか出会えないでいる.これぞ,というものがあれば,ぜひ教えて下さい.
あるテーマを設定して過去の知見をレビューし,整理しつつ問題提起をする作業を「広義の研究」に含めるならば,その機能は間違いなく博物館に必要だと言える.この作業こそ展覧会やセミナーの企画の根本にあるものであって,それなしにはオリジナルな展示なんて不可能だから.
前者の作業を行うには後者の能力が必要不可欠なのだが,後者の作業を行うのに,前者の能力は必ずしも必要ではないような気がするんだけど,どうかな.両者の間には,実は大きな懸隔がある.そこをきちんと区別した研究機能論が読んでみたいと思っている.