山階研の「提言」を読んでみた。震災を受けての「鳥類の保全上必要な対策」だと言うけれど、残念ながら説得力がない。
内容は、つまるところ「被害地で鳥の調査をしろ(させろ?)」と言っているだけ。野生生物の被害調査が必要だってことは、素人にだって役人にだって分かっている。地元だって、そもそも船が出せる状況なら、とっくに調査している。地元には無理だけど外部の人間には可能なのであれば、自分たちで船を連れて行って調べればいい。それを、わざわざ「提言」するのはなぜだろう?他人任せにしたいということだろうか。
わざわざ「提言」されなくても、もう少し時間が経てば、沿岸と島における影響調査は可能になる。そのとき、専門家として調査結果をどう生かすのか。仮に、絶滅危惧種の生息地が壊滅したという状況把握ができたとして、次に何をするのか。そこからが真の意味での「対策」だろう。生息地を復元できる見込みは、たぶんほとんどない。そもそも、甚大な自然災害を受けた野生生物の生息地を、人間が復元すべきか否か、激しい議論となるはずだ。それとも、とりあえず野鳥を保護して、他所で繁殖させるというのだろうか?そういった「対策」については、一片も触れられていない。
「対策をまとめた」と書きながら、ただ「調査が必要だ」「把握が急務だ」と言うだけ。これでは、千載一遇のデータが欲しい研究者の欲望を「保全」というもっともらしい言葉で糊塗しているようにしか見えないということが、どこまで自覚できているか疑問だ。
今のように困難な社会状況の下では、モニタリングで何らかの変化を捉えられたとして、その結果が論文になる以外に何の役に立つのかが、真摯に問われてしまう。全ての「モニタリング」行為に潜在し、ふだんは隠されている問題が、こういう時に表に出てきてしまうのだ。もっと厳しく考えないと。